【音楽史対策】ロマン主義音楽のはじまりについて

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こんにちは。岡田智則です。

今回はロマン主義のはじまりについて解説していきます。

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ロマン主義の背景

ロマン主義音楽の始まりは1810からとされています。

これは、メンデルスゾーン(1809年生まれ)やシューマン(1810年生まれ)、ショパン(1810年生まれ)、リスト(1811年生まれ)といったロマン派時代を代表する作曲家が1810あたりに続々と誕生したことが理由です。

19世紀になると、18世紀のヨーロッパを支配していた啓蒙主義は、西洋の伝統を軽視した思想であるとし、その運動に反対する動きが見られるようになりました。多くの芸術家は、本来人間に備わっている感情を重視し、それを空想的・牧歌的な世界へと憧れを示すようになり、個人の人間性を尊重する芸術運動が広がっていきます。

特にドイツでは、ゲーテやシラーを中心とした文学活動によってこの思想は盛んに広がっていき、この改革運動をシュトルム・ウント・ドランクといいます。

19世紀は、1789年のフランス革命によって市民社会が形成されていきます。これにより、貴族や王族の間で楽しまれていた音楽も市民も鑑賞するようになっていきます。しかし、これまで芸術音楽を鑑賞したことない市民は、音楽の内容を簡単に理解することはできませんでした。そこで市民は、歌詞の意味が理解できる声楽曲へと関心を示すようになります。

また、市民階級の中でもとりわけ裕福な家庭では、ピアノなどの楽器が購入できるようになり、家庭内で手軽に演奏したり鑑賞できる小品がもてはやされていきます。

ロマン主義音楽の芸術的思潮

クラシック音楽は、絶対音楽標題音楽の2種類が存在します。絶対音楽は、音楽以外の概念とは結びつきがなく、楽曲の構成面に集中して作曲された音楽で、標題音楽は、音楽以外の文学的・絵画的内容を楽音で表現している音楽です。従って、具体的な意味を伝える声楽曲は必ず標題音楽と言えます。作品タイトルは、標題音楽の場合は、音楽で表現されている内容が示され、絶対音楽の場合は、具体的に表現されている事物がないため、現在は楽種・調性・番号(例:交響曲第93726番、変ロ長調、Op.5719374731)が用いられています。←必ず暗記

ロマン主義は、、個性の自由な表現を尊重し、理想郷を求める耽美主義への傾向が見られるようになっていきます。形式よりも内容を重んじ、言語的要素を必要とし、表現される音楽が表題音楽へと向かっていきました。

また、ロマン主義の主要な論理の1つに、ノヴァーリスによって掲げられた「総合」の理念があり、芸術の諸分野が総合性を重んじるようにもなっていきました。音楽は、劇的・詩的なものとの不可分の関係が求められ、音楽の中に、文学などの他の芸術要素も取り込もうとする動きが見られるようになっていきます。

歌曲を題材にした器楽曲

市民社会の到来により、一般市民の人々は芸術音楽の鑑賞に、歌詞を理解することができる声楽曲を求めていくようになります。

その要求に答えたのが、「歌曲の王シューベルトです。←ニックネームを必ず覚えること

シューベルトは、自身が作曲した小品的な歌曲を簡易な楽譜で印刷して販売する方法をとり、市民に手軽に歌ったり鑑賞できるようにしました。このように作られた歌曲をドイツリートと言います。

ドイツリートは、音楽のイメージが作詞家と共有するものであり、ゲーテをはじめとするドイツロマン主義の詩人の詩に音楽をつけたため、詩の精神が音楽にも反映されるようになります。つまりドイツリートとは、詩によって語られた個人的な世界観がまとめられた音楽と言えます。←必ず暗記

このドイツリートは、のちにシューマンブラームスウォルフリヒャルトシュトラウスへと受け継がれていきます。

歌曲とは対象に、音だけで構成される器楽曲は市民には理解が難しく、鑑賞の対象になりにくいものでした。そこでシューベルトは、歌曲の旋律を器楽で演奏する形をとり、一般の人々に理解しやすいように器楽曲を作曲していきました。この手法で、シューベルトは自身の歌曲でもある「さすらい人」の旋律を用いて、器楽で演奏できる曲へと作り変え「さすらい人幻想曲」というタイトルで出版しました。市民の人々は、この歌曲の編曲という形で、器楽の音楽に対する理解を深めていったのです。

シューベルトの三大歌曲:美しい水車小屋の娘白鳥の歌冬の旅 ←必ず暗記

性格的小曲

シューベルトのドイツリードの他に、19世紀を通じて市民に楽しまれた娯楽的な器楽曲にキャラクターピースと呼ばれる性格的・抒情的な小曲があります。この音楽の大半は標題性を持ち、それに暗示された詩的気分によって性格付けられている音楽です。特有の形式も持たず、個人的な情緒の世界をごく短い作品にまとめられていることが特徴です。←必ず暗記

この音楽に大きく貢献したのがシューマンです。彼の作品は、標題の付けられた小曲が組曲形式になっていることが大きな特徴です。そのような小品は、一般家庭でも楽しむことができる作品ということでハウスムジークと呼ばれています。代表的な作品に、「謝肉祭」や「子供の情景」があります。

シューマンの三大歌曲:女の愛と生涯詩人の恋ミルテの花 ←必ず暗記

名演奏家の出現

市民社会が成立することによって、作曲家は宮廷や貴族から独立し、個人で活動するようになっていきます。その社会背景の中で、演奏を主体とするいわゆる演奏家が出てくるようになります。作曲家が作品を書き、演奏家が演奏して、一般の人々が鑑賞する演奏会のスタイルは、19世紀の後半になってから確立されたものなのです。

このように、演奏に特化した名人芸技巧を持つ人たちのことを、ビルトゥオーゾといいます。有名なビルトゥオーゾにバイオリンのパガニーニやピアノのリストがいます。

イタリア出身のパガニーニは、1828のウィーン、1829年のベルリン、1831のパリで独自の演奏会を通して、新しいバイオリン奏法を開拓していきました。フラジョレット左手によるピチカートレガートとスタッカートの対比的使用二重音奏法など、現代の技法につながる奏法を確立しました。

パガニーニ

ハンガリー出身のリストは、ピアノの表現機能を極限までに拡大し、ピアノリサイタルという形を定着化させていきます。オペラやアリアを主題とする変奏曲や幻想曲、また規制の旋律や楽曲を基準に作られたパラフレーズがピアノ演奏のために作曲されました。特にパラフレーズは、主題となる旋律に自由な挿入句なども付け加えられ、名人芸的技巧を聴かせるように作曲し、自身のリサイタルで披露していきました。

試験対策

以下の用語について記述せよ

ドイツリードフランス革命後の市民社会において、芸術音楽の鑑賞を望んだ一般市民は、歌詞を理解できる声楽曲を求めるようになる。それに応えたシューベルトは、手軽に演奏したり鑑賞できるように歌曲をシートに印刷して出版したのがドイツリートである。音楽のイメージが作詞者と共有できるものがあり、詩の精神が音楽にも反映され、詩によって語られた個人的な世界観がまとめらた音楽と定義できる。
ビーダーマイヤー様式ウィーン体制期における、ドイツ・オーストリアの家具調度、美術、文学の様式ならびにその時代の生活感情を示すもの。この時期、メッテルニヒの指導による保守反動の復古政治が推進されたが、自由主義に目覚めた多くの市民が政治に背を向け、市民の中にも貴族趣味が芽生えるようになった。そのため、市民の家庭でも、ピアノなどの楽器が購入されるようになり、家庭で手軽に演奏したり鑑賞できる音楽が求められていった。
キャラクターピース19世紀を通して市民の娯楽的な器楽曲にキャラクターピースと呼ばれる性格的・抒情的な小品が作曲された。この音楽の大半は標題性を持ち、それに暗示された詩的気分により性格付けられている。形式などにもこだわらず、個人的な情緒の世界をごく短い作品にまとまられている。
標題音楽・絶対音楽クラシック音楽の分類に標題音楽と絶対音楽がある。絶対音楽は、音楽以外の概念と結びつかず、音楽の構成面に集中される楽曲で、標題音楽は、音楽以外の文学的・絵画的などの内容を楽音で表現する音楽である。作品タイトルは標題音楽の場合は、音楽で表現されている内容が示され、絶対音楽の場合は、具体的に表現されている事物がないため、現在は楽種・調性・番号が用いられている。
演奏会用序曲19世紀前半、オペラなどに使われている管弦楽曲「序曲」が、演奏会において単独で演奏されるようになり、それらは演奏会用序曲と呼ばれた。序曲はオペラとの関わりが強かったため、物語性などの標題性を有するため、標題音楽に分類される。ベートーベンの「エグモント序曲」から、メンデルスゾーンや国民楽派によって発展していき、後の交響詩の原型になっていく。
音画法音で絵画的情景、事物の動きや物音などを楽音によって描写的に表現する方法。その手法が用いられる作品は、絵画的情景や劇的物語で採られ、結果的に楽曲では具体的な事柄が描書されることにはなるが、作品の主題は事物の描出に留まらず、その根底に存在する「感情の表出」にある。

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